チャツボミゴケ公園はいまでこそ中之条町の所有ですが、つい最近までは鉱山を運営していた日本鋼管(現JFE)が所有していました。
現在のチャツボミゴケ公園のある辺りは国内随一の褐鉄鉱(かってっこう)鉱床であることが戦前から知られていました。
戦時中の鉄需要から国内の鉄鉱石増産に迫られ、この地方の鉱業権を取得した日本鋼管は国の命により鉱山開発を行うことに。
群馬鉄山を呼ばれ、国内2位の生産量を誇る露天掘鉱山として栄え最盛期には2000人が鉱山に携わっていました。
群馬鉄山は昭和41年に閉山。その後は日本鋼管の保養所としてこの地は管理され(奥草津休暇村)、つい最近の2012年になって中之条町に無償譲渡されました。
ではなぜ鉄鉱石の取れる鉱山にとてもめずらしいチャツボミゴケが群生しているのでしょうか。
それは、この鉄鉱石はもともとチャツボミゴケだったからです。つまり、強酸性の温泉を含んだチャツボミゴケがゆっくりと時間をかけて鉄鉱石に変わっていったといわれているのです。
これは「バイオミネラリゼーション」と呼ばれる作用によるものです。
ここ群馬鉄山は閉山した昭和41年以降も50年近く日本鋼管によって保存され、その間その広大な土地は新たな開発が行われずにいました。
もともと人里離れた山奥です。見事なまでに希少なチャツボミゴケがそのままの姿で残っています。
「バイオミネラリゼーション」とは、生物が自身の身体の内外に鉱物(無機化合物)を作り出す作用のことを言います。
というととても難しく感じますが、実は自然界では比較的よくあることです。身近な例では、サンゴや真珠、珪藻土などが挙げられます。
チャツボミゴケの場合、このコケにバクテリアが関与することにより今でも鉄鉱石が生成されていることが確認されています。